📌 東西パイプラインとは何か

サウジアラビアの「東西パイプライン(Petroline)」は、ペルシャ湾岸の巨大油田地帯(ラスタヌラ・アブカイク)から紅海沿岸のヤンブー港まで全長約1,200kmをつなぐ原油輸送の大動脈である。ホルムズ海峡封鎖下では、日本を含むアジア向け原油の事実上唯一の代替輸出ルートとして機能していた。輸送能力は最大日量700万バレルで、サウジの全輸出量の約75%をカバーする。

🚨 停戦合意直後の攻撃

4月8日の米イラン停戦合意発表からわずか数時間後、イランが東西パイプラインをドローンで攻撃した。同時にサウジの主要エネルギー施設も標的となった。

東西パイプライン:流量が日量70万バレル減少
石油生産能力:約60万バレル/日の減少(マニファ・フライス油田が被弾)
精製施設:ラスタヌラ製油所・SAMREF(ヤンブー)・リヤド製油所が攻撃を受け精製品出荷に影響
ヤンブー港での積み込みは継続中(被害は限定的との報告あり)

サウジのエネルギー輸出能力の約10%が一時的に失われたと試算された(Middle East Eye、当時)。

⚡ なぜ停戦直後に攻撃したのか

停戦合意はイスラエルのレバノン攻撃継続を理由にイランが「違反」と主張しており、サウジへの攻撃はその報復と見られている。イランにとって東西パイプラインは「ホルムズ封鎖の効果を無力化する存在」であり、封鎖の経済的圧力を維持するための戦略的ターゲットでもある。

🇯🇵 日本への影響

日本の原油輸入に占めるサウジアラビアの割合は約40〜44%。ホルムズ封鎖以降、ENEOSなどはヤンブー港経由(ルートA)でサウジ原油を調達してきたが、今回の攻撃はその代替ルート自体が標的になったことを意味した。当時の日本側の状況は以下の通り。

✅ 政府は3月26日から国家備蓄(史上最大規模・計45日分)の放出を開始済み
✅ 総備蓄残量は約254日分(国家+民間+産油国共同備蓄)を確保中
⚠️ 日本向けサウジ原油の輸入価格が80%超急騰(2〜3月長期契約)
⚠️ ルートC(喜望峰回り・約100日)への切り替えが本格検討段階に
🔴 石油化学産業では減産の動きが広がり始めていた
📋 結論

ホルムズ封鎖+東西パイプライン損傷という「二重の供給障害」が現実となった。日本は備蓄で短期的な危機を回避できていたが、パイプライン復旧の遅れやルートC移行コストの増大が長期化すれば、エネルギーコストの大幅上昇と産業への波及が避けられない構造だった。